大粒ゲーム紹介31:Outer Wilds

アメリカのゲーム開発スタジオ、Mobius Digitalによるゲーム「Outer Wilds」の紹介。

一言で:Outer Wildsとは
恒星系最後の20分をループする世界の謎を解き明かす3Dミステリーアドベンチャー


概要

  • ジャンル:3D一人称視点ミステリーアクションアドベンチャー
  • 開発者:Mobius Digital
  • リリース日:2019年10月15日
  • 価格:通常時2,570円、セール時1,713円、PS4版2,962円、Xbox One版2,900円
  • プラットフォーム:SteamPS4Xbox One
  • 日本語:有
  • マルチプレイヤー:無
  • コントローラー:使用可
  • プレイ時間:10時間~
物語性 ★★★★★
ゲーム性 ★★★★☆
難易度 ★★★☆☆
コスパ ★★★★☆
推理度 ★★★★★

 

こんな人にお勧め

  • ループものが好きな人
  • 宇宙モノのSFが好きな人
  • 謎解きが好きな人

 

ネタバレなし解説

ゲームについて、以下ストアページより引用。

Giant Bomb、Polygon、Eurogamer、The Guardianにゲームオブザイヤー2019の候補として選ばれたOuter Wildsは、終わりのないタイムループに囚われた恒星系で繰り広げられるオープンワールドミステリーで、高い評価を獲得し、賞を受賞しました。

上記説明文だけだと、ほとんど賞のことしかわからない。もう少し引用すると、

スペースプログラムへようこそ!
始まったばかりのOuter Wilds ベンチャーが、繰り返し宇宙に旅立ち、宇宙の神秘に触れながら、調査する任務にキミを採用する。

謎に満ちた恒星系…
不吉なDark Brambleの中心には何が潜んでいるのか? 月にエイリアンの遺跡を建てたのは誰なのか? 無限のタイムループは止めることはできるのか? 広大な宇宙の先に何があるのか、キミの目で確かめよう。

時間とともに変化する宇宙
Outer Wildsの惑星は、隠された時空にあり、時間の経過と共に変化している。砂に埋まる前に地下都市を訪問したり、破壊される前に惑星を探査しよう。謎の解明を阻むかのように、危険な環境と自然災害が繰り返し迫ってくる。

インターギャラクティックハイキングギアを身につけろ!
ハイキングブーツをストラップ、酸素レベルをチェック、さぁ宇宙冒険の準備をしよう。さまざまなユニークなガジェットを使って、惑星を探検したり、謎の信号を追跡したり、古代エイリアンが残した暗号を解読したり、完全なマシュマロを焚火で焼こう。

つまり、「なぜかタイムループが起きるようになった恒星系で、宇宙を探索して謎を解明しよう。あと、完全なマシュマロを焼こう。」といったあたり。具体的ではないが、何も知らずにプレイするのが一番面白いだろう。(なお、マシュマロは本当に焼ける。頑張って完ぺきに仕上げよう)

outerwilds_mallow
各地にはこのような焚火がある。ここでマシュマロを焼ける。

操作について。チュートリアルもあるが、基本的に移動、ジャンプ、アクション、その他道具の使用等、そこまで複雑な操作は求められない。ただ、宇宙モノにありがちだが、宇宙船の操作は若干癖があり、慣れないとなかなか難しい

ゲーム性について。基本的に、主人公が目覚める→探索をする→22分経過→最初に戻る、となる。目標などは設定されないため、プレイヤーは自由に探索できる。一応、タイムループの原因を探り、それを止めることが全体の目標となるが、ゲーム中に別に「ループを止めろ」とは言われないし、謎を解いていくことで自然と真実に近づくといったあたり。
なお、ループの際に引き継がれる要素はデータのみで、手に入れたものや解いた仕掛けなどは一切引き継がれない。そのため、本当に自由に探索できるし、やろうと思えばスタート直後にループを止めることもできる(基本的に無理だが)。

outerwilds_words
各地ではこういった文章が残されている。真実にかかわるものからくだらないものまでさまざま。

このゲームは、謎解きが多く存在し、プレイヤーのひらめきが必要なこともある。しかしそれらはそこまで難しいわけではなく、詰むようなことはないだろう。それに、重要な情報はデータとしてすべて保持されるため、記憶をする必要もない。

ただ、ほとんど何もわからないような状態でプレイヤーは放り出されるため、最初の1,2時間は面白みがわかりづらい。しかしプレイし続けると、どんどんと謎を解いていく面白さや、様々な真実がわかっていく。
総じて、非常に良く構成が練られたゲーム。宇宙モノのSFが好きならぜひ。


ネタバレあり感想

※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール

それではネタバレありで感想を書きます。
ストーリーについては後述するとして、まずは操作について。操作は本当に最初から使えるものだけというのが、単純ながらに良い。「これを入手しないと先へ進めない」といったようなことはないため、大幅にゲームの自由度をあげている。

ゲーム性について。これも非常に良い。22分というのは、こういったループものではなかなか長めに感じるが、いろいろと探索すると短くも感じる。そして、その時間制限を明確には描写せず、恒星の状態などでわかるようになっており、宇宙モノの設定を活かせている。
惑星も独自性があり、記憶に残りやすい。そのうえ、毎回同じ動きをしているため、ループするたびに「次はここへ向かおう」という気にさせてくれる。

outerwilds_bone
巨大アンコウの骨。重要ロケーションの1つ。

ストーリーについて、全体を書くならこのような感じだろう。

  1. ノマイ、「宇宙の眼」の信号をキャッチ、舞台となる恒星系にたどり着く。
  2. 闇のイバラに捕まり、3機の脱出ポッドで脱出する。1機を除き、他の惑星にたどり着く。
  3. 無事脱出できたノマイは、惑星で集落を作るとともに、宇宙の眼を捜索。しかし既存の技術では発見できない。
  4. そうしているさなか、「脆い空洞」のブラックホールがホワイトホールに繋がっていることを知る。そのうえ、ブラックホールに入ったものは、一瞬だけホワイトホールにも同時に存在することも知る。
  5. この、「一瞬だけだが同時に存在する」というのは一種のタイムトラベルである。そのため、これを大幅に拡張すれば完全なタイムトラベルができるのではないかと考える。
  6. 信号で探すことをあきらめ、探査機を使って物理的に捜索することを考案。ここに、先ほどのタイムトラベル技術を活用すれば、タイムループを引き起こし、無限に探査機を打ち出せると考える。
  7. しかし、探査機が十分に探索できる時間(この場合、22分)を確保するには、膨大なエネルギーが必要となる。そのエネルギーに超新星爆発を使うことを決める。(灰の双子星プロジェクト)
  8. ワープ技術を発明し、「超新星爆発を起こすためのステーション」「それを探知し探査機を打ち出すステーション」「ループを起こす装置」「ループ内で起きた出来事を記録する石像」を作る。(なお、その最中「木の炉辺」で主人公たちの種族の基となる生物を見つける)
  9. 超新星爆発を引き起こそうとするが失敗。「灰の双子星プロジェクト」は放棄される。
  10. 彗星(侵入者)が近づいてきたため探索を開始。中には超高密度の幽霊物質があり、これが破裂することで、ノマイが全滅する。
  11. はるか未来、主人公たちの種族が誕生する。
  12. 主人公初フライトの日。この日は、恒星の寿命が来る日でもあり、自動的に「灰の双子星プロジェクト」が起動する。
  13. 数千回のループを経て、宇宙の眼の座標が判明。石像によって、主人公含む何人かが石像とつながる(本編開始)。
  14. 探索後、主人公は宇宙の眼にたどり着く。そこで宇宙の終わりと始まりを見つめ、エンディング。

ここには書いていない要素も多々あるため、画像をはさんで残りをば。

outerwilds_ship
宇宙船。重要な拠点。
  • 主人公が目覚めるとき、「巨人の大海」で爆発が起きるが、これは探査機が発射されたということ。そのため、(発射される方向にもよるが)大急ぎで発射物を追えば探査機にたどり着ける。爆発しているのは、もちろん生前のノマイがそう設定していたから。
  • 「宇宙の眼」自体は、概念的なもので観測が不可能だが、衛星である「量子の月」は観測できる。この「宇宙の眼」とはすなわち神の場所である。新約聖書での記述で、「初めに言があった」という表現があるが、これは「宇宙が存在するよりも前に、神の意思が存在した」というような解釈に取られる。つまり、宇宙はビッグバン仮説に基づき、何度も繰り返し生まれては破壊を繰り返しているが、その影響が及ばない、概念的な場所というのが「宇宙の眼」であろう。
  • 量子の月は、「観測者がいる限り動かない」という性質を持っている。これは、量子力学における「波動関数の収縮」と同様の物だろう。つまり、「観測者がいない限り、それはどこにでも存在しうる」ということであり、ゲームでもそれが再現されている。
  • 「宇宙の眼」にたどり着いた後、主人公は今までの冒険を基に様々な出来事が起こる。おそらくこれは、「既に主人公の肉体は存在せず、意思だけの存在となって、宇宙の創造と破壊を自分の記憶と重ねながら体験している」といったところであろう。

もはやスケールが広大過ぎて訳が分からなくなる。まあ、宇宙SF系にありがちな、「量子力学をこう解釈して、それをゲームにした」というものの1つであり、今の自分たちでは到底理解の及ばぬ次元の話ということにしておこう(量子力学者ならもっと詳しくわかるかもしれないが)。

総じて、自由度の高さと謎解きのバランス、そしてループがうまくかみ合っている本作。あまりにも話のスケールが広大過ぎて、なかなか理解が及ばないが、深く考えずにマシュマロでも焼こう。