
アルゼンチンのゲーム開発者maitan69 (Matías Schmied)氏によるゲーム「Evan’s Remains エヴァンの残したもの」の紹介。
一言で:Evan’s Remains エヴァンの残したものとは
「エヴァン」を探しに行く謎多き2Dパズルプラットフォーマーアドベンチャー
概要
- ジャンル:2Dパズルプラットフォーマーアドベンチャー
- 開発者:maitan69 (Matías Schmied)
- リリース日:2020年6月12日
- 価格:通常時720円、セール時648円、Xbox One版820円
- プラットフォーム:Steam、Xbox One
- 日本語:有
- マルチプレイヤー:無
- コントローラー:使用可
- プレイ時間:2~3時間
物語性 | ★★★★★ |
ゲーム性 | ★★★☆☆ |
難易度 | ★★★☆☆ |
コスパ | ★★☆☆☆ |
パズル性 | ★★★★☆ |
こんな人にお勧め
- 考察が好きな人
- 美麗なドット絵に惹かれた人
- 難しいパズルはパスしたい人
ネタバレなし解説
ゲームについて、以下ストアページより引用。
突然消えた天才少年を探しに行くミステリースリラー。
上記説明文が、このゲームを物語っている。これだけでは意味不明に感じるかもしれないが、ゲームスタート時にプレイヤー及び主人公が知っている情報もこれだけである。一応、ストアページの下の方に補足的に書いてあるが、なかなか理解できないだろう。
パズルプラットフォーマーであるが、割とパズルより物語に重きを置いたゲームである。そのため、とにかく謎を紐解いていく系のストーリーが好きな人にはお勧めできるだろう。逆に、パズルを解きたいという人にはあまり向かないかもしれない。

ストーリーについて、上述したように、「エヴァンという謎の人物を、謎の少女が、謎の目的で、謎の島で探索する」という謎まみれのものとなっている。
操作について。左右への移動とジャンプのみとシンプル。割と硬派な感じ。
ゲーム性について。基本的に、目の前に立ちふさがるパズルを、移動とジャンプで突破していくといういかにもなパズルプラットフォーマー。では何が特徴かというと、いわゆる「ジャンプすると切り替わる」系のパズル構成になっていることだろう。
あまり具体的には述べないが、これ自体はそこまで目新しいものではないが、なかなか構成は良い。また、これらパズルは自由にスキップできるため、詰まることはないだろう。

とにかく、このゲームはストーリーを紐解いていくのが楽しい。そのストーリーもなかなか質が高い。
しかしながら、少し残念な点もある。値段の割に短めな点と、ごく一部翻訳が微妙な点である。値段の割に短いことは、ストーリー性の良さによってある程度緩和されているとはいえ、それでも短い。もう少しやりこみ要素が欲しかったか。翻訳については、やはりストーリー主導のゲームであるため、そこで突っかかってしまうが、そこまで強く気にするほどのことでもないだろう。
総じて、とにかくストーリーが素晴らしいゲーム。最近、こういった「プレイヤーも主人公も(ほぼ)何も知らない状態で始まる」ゲームというのはありがちだが、中でもこのゲームにはひときわ輝くものがある。実は管理人はグラフィックで一目ぼれし、Kickstaterでバッカーになったのだが、それだけの価値はあったように思う。
ネタバレあり感想
※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール
それではネタバレありで感想を書きます。
とにかく、このゲームはストーリーが良いといったのだが、実は個人的に最後の展開に疑問符を抱いた。そこらへんも含め、感想を。
まず操作性について。プラットフォーマーとして十分。パズル要素を阻害しない程度に良い。
次にゲーム性について。ありがちではあるのだが、この「ジャンプで切り替わる」系のパズルが、構成含めなかなか良い。最初は単純すぎる感じはしたが、様々なギミックが追加されるにつれ、またSEの面でも、なかなか楽しめるようになった。それでも、若干特徴に乏しいようには感じたが、それはストーリー性がゆえにしょうがない。

それではストーリーについて。ある程度時系列順に書くと、
- アンドレーがポータル等のテクノロジーを開発、それをヴィンセントが表向きの顔として発表する。これ以降、二人一組で「エヴァン」を名乗る。
- ヴィンセントが一旦表から退き放浪。とある島にてクローバーと出会う。
- ヴィンセントがクローバーのもとで居候を始める。クローバーにはディシスという妹がおり、寿命が短いことを知る。
- ヴィンセントが島の住民から不老不死の伝説が残る島の話を聞き、島に渡る。
- ヴィンセントは不老不死が存在しないことを知る。そこで、「エヴァン」の片割れであるアンドレーに相談し、不老不死をでっちあげる。
- ヴィンセントがクローバーに不老不死の伝説を紹介し、島に行っている間ディシスの面倒を見るという。後にディシス死亡。
- クローバーが島に到着、一足遅れて「成長したディシス」役の女優が島に到着、本編開始。
- アンドレー、計画を確実なものとするため、クローバーに毒入りの水を飲ませる。
- 計画通りに進行、クローバーが死亡。エンディングへ。
- (エンディング後、ヴィンセントが彼女と島を訪れる。)
こういったあたりだろうか。このどんでん返しには驚嘆された。実際にプレイすると、2.3.4.の部分は早い段階で予測できるが、残りの部分は大半がクローバーの死亡後、ヴィンセントの回想で知ることになる。なお、10.については、あくまでバッカーへのおまけといった位置づけ。

このストーリーラインはなかなかに面白いが、しかし伏線の無さと疑問点の多さがゆえに、個人的に納得のいかない感じになってしまった。特に、「なぜディシス役の女優はプレイヤーまでも騙すような演技をしていたのか」という点がある。
ゲームスタート時から、クローバー死亡まで、いついかなる時でも、ディシスは演技をしていた。まあ、多少はクローバーに見られてもいいようにといったところかもしれないが、クローバーの干渉できない自分の部屋でまで、あるいは自分の思考まで演技するというのは多少無理があるように感じる。いかな大俳優といえども、全く別の人間になることは不可能だし、四六時中演技を続けるのは不可能だろう。
別の人間を演じるために、心理的な面までしっかりと整える俳優が現実には確かにいる。だが、これはやはり気になってしまう。
なんとなく、感動の展開から流していると、どんでん返しに驚くとともに感動したまま終わるのだが、プレイしなおすとそう思ってしまう。邪推であるかもしれないが、本当はクローバー死亡前の、クローバーが生き続けたままで、時々ディシスが会いに来るようになる、それが本来の展開だったのではないだろうか。しかしその展開だと、これもまた矛盾が発生してしまうので、その解消のために思いついたアイデアを入れたがために序盤と終盤で齟齬が発生してしまったのではないか。そう考えると、インディーズの、しかもバッカーが発表を待っている状況では致し方ないことであろう。

その他いろいろ気になったが、この程度で置いておこう。
もう1つ触れる点として、Steamのレビューにもある、「いくらバッカーと言えども、自分のYouTubeチャンネルを大事なシーンで宣伝するのはいかがなものか」という点について、これはなかなか複雑な問題であろう。
資本主義だから、ギブアンドテイクは当然である。このメッセージを残す特典は、$75以上をバックした人に与えられる。それなら、その内容は(余程政治的/性的メッセージじゃない限り)OKであるし、流れるタイミングによっては問題ないだろう。しかし、流れるタイミングが、感動的なエンディング後の余韻を味わいつつあるところである。これは確かに不快に思われても仕方がない。
だが、おそらく開発者から、ストーリー展開や、具体的に流れるタイミングを知らされずに、ただメッセージのみを書いてほしいといわれたのだろう。実際、管理人がとあるゲームをプレアルファ(=開発段階)の状況を知れるほどの金額でバックをしたゲームでも、ストーリー展開はもってのほか、ギミックなども大半が知らされていない。主に知れるのは、開発状況とごく一部のコンセプトアートだけである。だが、それでも「こんな感じで流れる」的な情報は欲しいだろう。
色々と書いたが、全体的に良いゲームであることに変わりはない。このゲームは、終盤の怒涛の展開に流されるままにしておくのが良い、まさに一度しか味わえない体験をさせてくれるゲームである。