
アメリカのゲーム開発スタジオ、Unbound Creationsによるゲーム「HEADLINER: NoviNews」の紹介。
一言で:HEADLINER: NoviNewsとは
編集責任者としてニュース記事の採用/不採用を決めるマルチエンディングアドベンチャーゲーム
HEADLINERシリーズ
HEADLINER→HEADLINER: NoviNews(今ココ)
概要
- ジャンル:選択型進行アドベンチャー
- 開発者:Unbound Creations
- リリース日:2018年10月24日
- 価格:通常時1,420円、セール時994円、Steam版以外は1,600円
- プラットフォーム:Steam、Switch、PS4、Xbox One
- 日本語:有
- マルチプレイヤー:無
- コントローラー:使用可
- プレイ時間:5時間~6時間
物語性 | ★★★★★ |
ゲーム性 | ★★☆☆☆ |
難易度 | ★★☆☆☆ |
コスパ | ★★★☆☆ |
リプレイ性 | ★★★☆☆ |
こんな人にお勧め
- 自分の行動で世論を操作したい人
- 自分の選択に責任が持てる人
- 偏向報道が嫌いな人
ネタバレなし解説
ゲームについて、以下ストアページより引用。
政情不安定な国ノヴィスタン。あなたはこの国唯一の新聞『ノヴィニュース』の編集長に就任しました。デスクには記者から様々な記事があがってきます。翌日の見出しを飾る記事を選択し、ノヴィスタンの世論を操作しましょう。
このゲームは、ニュースを操ることに重きを置いたアドベンチャーゲームである。様々な面において、前作「HEADLINER」より大幅に進化し、より1つのゲームとしての完成度が高くなった。前作同様、現実世界の様々な問題が形を変えて存在している世界において、ニュースを操ることが世論にどのような影響を与え、それが世界に、または身近にどのような変化が起こるのか、それをテーマとしたゲームである。
今作では、選択により運命を左右されるキャラクターが増え、自分の選択の影響がより重大さを増した。
なお、前作をやっていなくとも問題はないが、前作のことに軽く触れるシーンもあるので、やっているとより楽しめる。
ストーリーについて、いろいろと事情は違うが、前作同様、主人公は編集長であることは一緒。他については、プレイしてみてほしい。

操作及びゲーム性について。このゲームの基本の流れは、「その日のニュース記事を採用/不採用する→家まで歩いて帰る→家での時間→…」である。そのため操作は基本的にビジュアルノベルのような単純さとなっている。ただ、前作と違い、立ち寄れる場所ができたため、若干ながら単調さは解消されている。
ニュースの採用/不採用は、最初は好きなようにできるようになっている。しかし、徐々に、対立する2つの意見のどちらを採用するか、会社の立場や自分の立場を考えどうするかなど、一筋縄ではいかないようになっていく。それに、選んだニュースはその日のうちに報道されるため、家まで歩いて帰る途中で何が起こるか、また他の登場人物はどうなるのかというのが、自分の選択によって引き起こされていく。
今作では、リプレイによってできることが増えていく。そのため、前作以上にリプレイを楽しめるようになっている。また、登場人物の増加により、ニュースの方向性も多岐にわたり、よりプレイヤーを悩ませる。

前作に比べ、値段が上がった分、1プレイの長さとリプレイ性が大幅に向上している。ビジュアル面でも、3Dの舞台と2Dの立ち絵が大きく進化しており、より魅力的になった。
少し残念なところは、3Dのモデルが微妙なところ。明らかに立ち絵と違ううえ、一昔前のようなカクカクなポリゴンで違和感がある。メインの部分ではないものの、若干没入感を失ってしまっている。
総じて、前作から完ぺきといっていいほどに仕上げてきたゲーム。前作を遊んだ人はもちろん、アドベンチャーゲームが好きな人におススメしたい。
ネタバレあり感想
※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール
それではネタバレありで感想を書きます。
ストーリーは、選択によってさまざまに異なるうえ、リプレイすると展開が変わったりするが、中心となるのはストアページにもあるように、「国民皆保険を支持するか」「新聞社のスポンサーになりうる飲料会社を支持するか」「政府を批判するのか」といったところ。
今作は前作のような、単純なマジョリティ/マイノリティの問題ではなくなっており、より大きな問題を取り扱っている。
なお、前作の記事では、コロナウイルスの影響によって、黒人差別へのデモが世界で起きていることについて触れたが、今作はそれ以上の複雑さとなっている。
例えば、日本においてのコロナウイルス関連のニュースだけでも、上記3つに似たような事例を挙げると、「PCR検査の実施について」「マスクの製造に関連する問題」「コロナウイルスに対する与党の対応」となるだろう。単純な損得勘定では測れない、複雑に入り組んだ事情、そして小さな出来事が後に引き起こす大きな出来事のきっかけとなるバタフライ効果、それらがすべてこのゲームには込められている。

今作では、前作以上に金を稼ぐことが重要となる。最も金を稼ぐなら、スポンサーに媚を売り、政府を称賛すればよい。しかし、このような偏向報道をした結果は、必ずしもハッピーエンドとはならない。特に登場人物が増えた分、全員を救済するようなエンディングを迎えることはできない。どうしても切り捨てる部分は必要となる。それは自分自身か、はたまた身近な人間か…。
それに、今作は特に政府が腐敗しているうえ、大きく圧力をかけてくる。どうしても真実を伝える(=批判する)なら、相応の覚悟を持って臨まないといけないし、最悪自分の命を危険にさらすことになる。前作同様、「報道の自由」とは何かを考えさせられる。
今作も「報道するニュースを決めただけで、人の生死にかかわり、果てには国家へと影響を及ぼす」という、まさにバタフライ効果のはたらいている様を見せつけられる。選択の重さ、自由に選択できるがその実がんじがらめ、自分の正義感を貫くことの難しさ、そのような考えをもたらせてくるゲームである。