
アメリカのゲーム開発スタジオ、Unbound Creationsによるゲーム「HEADLINER」の紹介。
一言で:HEADLINERとは
編集責任者としてニュース記事の採用/不採用を決めるマルチエンディングアドベンチャーゲーム
HEADLINERシリーズ
HEADLINER(今ココ)→HEADLINER: NoviNews
概要
- ジャンル:選択型進行アドベンチャー
- 開発者:Unbound Creations
- リリース日:2017年10月3日
- 価格:通常時298円、セール時208円
- プラットフォーム:Steam
- 日本語:有
- マルチプレイヤー:無
- コントローラー:使用不可
- プレイ時間:1~2時間
物語性 | ★★★★☆ |
ゲーム性 | ★☆☆☆☆ |
難易度 | ★★☆☆☆ |
コスパ | ★★★☆☆ |
リプレイ性 | ★★☆☆☆ |
こんな人にお勧め
- 自分の行動で世論を操作したい人
- 自分の選択に責任が持てる人
- 偏向報道が嫌いな人
ネタバレなし解説
ゲームについて、以下ストアページより引用。
あなたは住民の大半が遺伝子組換えを施した架空の都市で、報道局の編集責任者に任命されました。民衆の目に触れるニュースを操ることができる、啓蒙的な短編アドベンチャーゲームです。マルチエンディングとシェア機能が搭載されており、前任のヘッドライナー達がどのような結末を迎えたのかを確認することができます。
このゲームは、上記説明文にあるように、ニュースを操ることに重きを置いたアドベンチャーゲームである。特に舞台となる場所は、住民の大半が遺伝子組み換えをした架空の都市とだけあって、現実世界の様々な問題が形を変えて存在している。その世界において、ニュースを操ることが世論にどのような影響を与え、それが世界に、または身近にどのような変化が起こるのか、それをテーマとしたゲームである。
上記に「啓蒙的」とあるように、「報道とは何か」「自分の選択は果たして正しかったか」など、考えさせられるような内容となっている。
ストーリーについて、こちらもストアページより引用。
あなたは住民の大半が遺伝子組換えを施した架空の都市で、報道局の編集責任者に任命されました。(中略)
遺伝子工学と社会不安がギャリクシアを埋め尽くしていた
君は地元ニュースチャンネルの編集責任者だ
君がヘッドライナーだ

操作及びゲーム性について。このゲームの基本の流れは、「その日のニュース記事を採用/不採用する→家まで歩いて帰る→家での家族との会話→…」である。そのため操作は基本的にビジュアルノベルのような単純さとなっている。
ニュースの採用/不採用は、最初は好きなようにできるようになっている。しかし、徐々に、対立する2つの意見のどちらを採用するか、会社の立場や自分の立場を考えどうするかなど、一筋縄ではいかないようになっていく。それに、選んだニュースはその日のうちに報道されるため、家まで歩いて帰る途中で何が起こるか、また家族はどうなるのかというのが、自分の選択によって引き起こされていく。
ストアページにもあるように、「「Papers, Please,」にバタフライ効果を組み合わせたようなゲーム」という表現が近い。ただ「採用/不採用」のスタンプを押しただけ、それだけで世論は変わっていく。そのため、リプレイをすると、全く別の物語になって面白い。

このゲームは、1プレイ45分程度と短めである。そのため基本的にはリプレイをすることとなる。「あそこであれをしていれば」などと考えつつプレイをしても、思うように立ち行かなくなってしまう。まさに啓蒙的な考えをさせられるゲームといったところ。
少し残念なところは、リプレイをしてもなお短く感じる長さと、日本語訳が一部微妙なところ。しかしそれを差し引いても十分に面白いゲームである。
なお、本作には(直接的な続編ではないが)続編として「HEADLINER: NoviNews」がある。今作から圧倒的に進化しているため、今作を楽しめた人なら楽しめるゲームだろう。
ネタバレあり感想
※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール
それではネタバレありで感想を書きます。
ストーリーは、選択によってさまざまに異なるが、中心となるのは「遺伝子組み換えを施した人/施していない人のどちらに肩入れするか」といったところだろう。
これは言い換えるなら、前者がマジョリティ、後者がマイノリティといったところだろう。これは現実世界でも差別などと直結して考えられる問題である。
まさにこの記事を執筆中、コロナウイルスの影響によって、黒人差別へのデモが世界で起きている。なぜ差別は起きるのか、マジョリティ/マイノリティを支援するとどのようなことが起きるのか、一見それらに関係ない記事でもどのような影響が起こるのか、どちらに対しても良い案の提案というのはできないのか、このような疑問に対する答えがこのゲームに込められている。

このゲームにおいて、(ある程度の)ハッピーエンドに到達するためには、偏向報道をしなければならない。どっちつかずな立場をとってしまうと売り上げが伸びず、最終的に解雇されてしまうからだ。
そのうえで、最も金を稼ぐには、マジョリティ向けの報道をする必要が出てくる。なぜならマイノリティ向けの報道なんて、購読するような人が少数になってしまって利益が減るからだ。「報道の自由」とはよく言ったもので、利益を求めるからには、対極する二つの意見のうちマイノリティを潰さなければならない。
昨今のゲームにおいて、「マイノリティがマジョリティを打ち倒す」ようなものをテーマにしたものは多い。しかしながら、それに対するアンチテーゼ的な、つまり啓蒙的なゲームが増えてきているのもまた事実である。それを今作では、「報道するニュースを決めただけで、人の生死にかかわり、果てには国家へと影響を及ぼす」という、まさにバタフライ効果のはたらいている様を見せつけられる。選択の重さ、自由に選択できるがその実がんじがらめ、自分の正義感を貫くことの難しさ、そのような考えをもたらせてくるゲームである。