
オランダのゲーム開発スタジオ、KeokeN Interactiveによるゲーム「Deliver Us The Moon」の紹介。
一言で:Deliver Us The Moonとは
資源が枯渇した地球を舞台に月からのエネルギーが急に停止した原因を探る近未来SFアドベンチャー
概要
- ジャンル:3Dアクションアドベンチャーパズル
- 開発者:KeokeN Interactive
- リリース日:2019年10月10日
- 価格:通常時2,570円、セール時1,927円
- プラットフォーム:Steam
- 日本語:有
- マルチプレイヤー:無
- コントローラー:使用可
- プレイ時間:6~7時間
物語性 | ★★★★★★ |
ゲーム性 | ★★☆☆☆ |
難易度 | ★★★☆☆ |
コスパ | ★★★☆☆ |
パズル性 | ★★☆☆☆ |
こんな人にお勧め
- 小説や映画が好きな人
- 退廃的なSFが好きな人
- 地球や月をテーマにした設定に飽きている人
ネタバレなし解説
ゲームについて、以下ストアページより引用。
Deliver Us The Moon は、資源が枯渇し終末を迎えた近未来の地球を舞台にしたSFスリラーです。絶滅の危機に瀕した人類を救うために、月での過酷なミッションに挑む孤独な宇宙飛行士が主人公です。
このゲームは、ストアページ説明文にあるように、一言で言ってしまえば「SFスリラー」である。しかし、その一言では表せられない、アドベンチャーゲームの中でも超大作であると言えるほどに、壮大なストーリーが展開される。
なお、ストーリー性を重視しているゲームであるがゆえに、ゲーム性は低めとなっている。このゲームは、「遊べる映画」といったように考えてプレイしてもらいたい。

ストーリーについては後回しにして、まずは操作について。前後左右への移動とアクション、ジャンプといった程度。後々操作が追加されるが、そこまで混乱するほどのものではないだろう。
ゲーム性について。基本的に目的地に向かうだけという、アドベンチャーゲームではありがちなもの。アクションについてもそこまで高難易度なものはなく、パズルの難易度も優しめ。ストーリーを楽しむのがメインとなっている。
なお、一人称視点と三人称視点がゲームの進行中に自動的に切り替わるが、能動的に切り替えることはできない。少し混乱してしまいがちなので注意。

それではストーリーについて。基本的な設定は、「資源が枯渇した地球と、そこへエネルギーを送っている月を舞台にした近未来SF。ある日突然、月からのエネルギー供給が停止、連絡も一切取れなくなってしまう。数年後、その原因を探るべく、主人公は単独月へと向かう。」といったあたり。
ここまでだと、割とありがちな設定に感じるかもしれない。しかし、設定がかなり練りこまれているため、没入感が桁違いとなっている。あまり具体的に言及するとネタバレとなるため避けるが、リアリティがありつつも近未来をうまく表現できている。
ここでいう「リアリティ」とは、大きな舞台設定から、小道具に至るまでに、「ありえそう」という雰囲気がでているということである。舞台設定では、資源が枯渇した地球となっているが、それによる退廃的な世界観や、月と地球の関係、そして様々なプロジェクト、それらがうまくできている。小道具では、いたるところに張り巡らされたケーブル、人が住んでいたことが良くわかる小道具たち、メモや文章から読み取れる人間関係など、きめ細やかに作られている。

総じて、ゲームとしてみると微妙な点も多いが、一本の「遊べる映画」としてみると、まさに超大作といった出来である。収集要素もあり、集めていくと物語の全容がわかるようになっている。しかし、最低限のストーリーは、収集要素をすべて集めずともわかるようになっている。この壮大な物語がどのように結するのか、ぜひ遊んでみて確かめてもらいたい。
ネタバレあり感想
※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール
それではネタバレありで感想を書きます。
操作やゲーム性については上記で述べた通り。ゲーム性は若干微妙だが、ストーリーを邪魔しない程度にうまくできている。序盤は割と退屈な感じで、たった一人での探索となるため寂しさを感じるが、ASEが出てからはそのどちらもが解消される。そして、プレイヤーを飽きさせないように、月面を移動する車が出てきたり、新たな謎解きも出てくる。確かに高いゲーム性とは言えないが、うまくできている。

ストーリーについて、大まかな時系列を以下にまとめる。
- 地球の資源が枯渇。月にあるヘリウム3をエネルギー源とするため、アイザックなどを中心に基地(WSA)及び装置(MPT)を建設。
- Huygens研究施設で冷凍睡眠の事故が発生。
- マッカーサーを中心として秘密裏にOUTWARD計画が始まる。
- 2054年大停電発生、同時にOUTWARD計画の船が二隻月を出発する。
- サラとロルフが探索開始、サラを置き去りに、ロルフは地球へと帰還。
- サラとアイザックが出会う。基地のエネルギー供給の安定化に成功。
- アイザックがサラを刺す。その後アイザックは自室に隠していた冷凍睡眠装置へとサラを入れる。
- (アイザックが冷凍睡眠していたケイシーとともに、3つめの船で月を出発する?詳細は不明)
- 2059年、ゲーム本編スタート。主人公ロルフは最後のヘリウム3を見つけ、地球へとエネルギー供給を開始する。
- エンディング。クレアがロルフ達を発見する。
大まかにはこう言ったところ。もっと細かいところはたくさんあるし、これだけでは語りきれないが、このあたりにしておこう。
この、本編が大停電から5年後という設定がこのゲームを面白くしている。事件の直後という設定や、はるか未来という設定はよくあるが、この期間の設定が良い。限られた資源の中、月へ探索に行くのもそう簡単ではなく、おそらく地球に住んでいる人は絶望していただろう。そういった中で、最後の希望として期待を背負う主人公。最初は誰なのかわからないが、終盤、ロルフということが判明し、サラに対する償いというものまで背負っており、ロルフの覚悟が感じられる。このどんでん返しの部分がうまくできている。

次にキャラクターの紹介。メインとなるキャラクターのみ書く。
- ロルフ・ロバートソン:本作の主人公。2054年の大停電の時、サラとともに探索に出るが、何らかの理由でサラを置き去りに地球へと帰還。その後悔から、月へと再び向かうことを決心する。エネルギーの復旧に成功するが、その際の衝撃により満身創痍となるが、冷凍睡眠されたサラを見つけ、そのそばで眠る。
- サラ・ベイカー:本作の(実質的)ヒロイン。2054年の大停電の後、探索を続けアイザックと出会う。ともにエネルギーの安定化に成功するが、個人的な理由でヘリウム3を持ち出そうとしたアイザックに激怒。アイザックに刺されてしまうが、ヘリウム3を手の届かないところへと閉じ込め力尽きる(がアイザックの手助けにより死亡していない)。
- ウィリアム・マッカーサー:本作の(実質的)悪役。地球とそれにエネルギー供給する月に見切りをつけ、別の惑星へと向かうOUTWARD計画を立ち上げる。秘密裏にヘリウム3を持ち出し、十分な量そろったのち大停電を引き起こす。その後船で脱出、無事目的の惑星へとたどり着く。
- アイザック・ヨハンソン:MPTネットワークにより、エネルギーを地球へと送れるようにした科学者。妻との間に娘が二人いる(ケイシーとクレア)。OUTWARD計画のことは知っており、当初否定していたが、様々な事情を考慮し、渋々賛成をする。冷凍睡眠したケイシーとともに脱出するため、ヘリウム3をこっそり持ち出そうとするがサラに発見されたことで、サラを刺してしまう。そのことを後悔し、サラに治療を施したのち、自室でサラを冷凍睡眠させる。その後詳細は不明。
- クレア・ヨハンソン:大停電を引き起こした原因の究明、及びMPTネットワークの復旧を目的としたFortuna計画の中心人物。アイザックの娘であり、父と同様の才能を発揮する。アイザックからその才能を見込まれ、月へと誘われるが拒否し地球に残った。本計画のオペレーターとして主人公に指示を出す。エンディング後、月へと向かい、主人公たちを発見する。
- マリア・ゴンザレス:Huygens研究施設での事故を生き延びた人物。原因を探るべく地球へと帰還、その後大停電が起き、Fortuna計画の中心人物の一人となる。
- ローザ・ラヴェルデ:Huygens研究施設での事故を生き延びた人物。月に残って原因を探るとともに、首脳陣の一人となる。OUTWARD計画に反対していたが、半強制的に船に乗せられる。しかし船は想定した軌道をそれ、行方不明になる(マッカーサーの計画によるものか)。
キャラクターのビジュアルは不明だが、そのやり取りなどで印象に残りやすいようになっている。この点は小説に近しいものを感じる。

総じて、まるで超大作な映画や小説を見ているかのような本作。当初はバグやDLCなどで批判がされた本作ではあるが、そういった問題も完全版では解決している。
ゲーム性がそこまで高くないが、没入感の高さを鑑みると妥当といった、むしろ優れたゲーム性と言えるのではないだろうか。