
ポーランドのゲーム開発スタジオ、Evil Indie Gamesによるゲーム「NO THING」の紹介。
一言で:NO THINGとは
昔のアーケードゲームを意識した、一人称視点3Dラン系ゲーム
概要
- ジャンル:一人称視点3Dラン系ゲーム
- 開発者:Evil Indie Games
- リリース日:2016年4月7日
- 価格:通常時398円、セール時99円、Switch版200円、Google Play版190円
- プラットフォーム:Steam、Switch、Google Play
- 日本語:Switch版のみ有
- マルチプレイヤー:無
- コントローラー:使用可
- プレイ時間:2~3時間
物語性 | ★★★★★ |
ゲーム性 | ★★★☆☆ |
難易度 | ★★★★☆ |
コスパ | ★★★★☆ |
サイケ度 | ★★☆☆☆ |
こんな人にお勧め
- ラン系ゲームが好きな人
- 昔のアーケードゲームが好きだった人
- 根気のある人
ネタバレなし解説
ゲームについて、以下ストアページより翻訳。
西暦1994年の未来。NO THINGは、未来の全体主義政権を舞台にした、超現実的でミニマルなアクションゲーム。「氷の女王」への重要文書を手にした事務員の物語のことを話そう。
このゲームは、割と珍しい一人称視点3Dラン系ゲームである。そのため、主人公はひたすら前に走るし、プレイヤーは道から落ちないように、左右へと動かなければならない。具体的には後述。
「西暦1994年の未来」というと違和感を感じると思うが、おそらくこの意味は、「(過去から見た)西暦1994年の未来」ということだろう。某岩男2のオープニングで、西暦200X年と出るようなもの。その文章や絵柄、ゲーム性から推定するに、1980年代のアーケードゲーム全盛期にリリースされたと想定したゲームということと考えられる。
なお、今作はSwitch版だけしか日本語対応していないので注意。

ストーリーは、ゲーム内では多く語られないが、ストアページを読むとおおまかな内容がわかる。おおよそ、「全体主義政権が、(過去から見た)未来である1994年を舞台とし、「氷の女王」という人物に重要文書を渡すために主人公の事務員は走る」といったあたりか。ただ、このゲームはアーケードゲームを想定しているためだろうか、ストーリーに沿ったステージなどではなく、サイケデリック気味な色調で、単純なステージとなっている。
操作は、なんと左右への方向転換だけ。しかも、90°ずつしか曲がれない。昔のアーケードゲーム以上に単純な操作性。

ゲーム性について。
このゲームは、上述したように、左右への90°の方向転換だけである。もちろん、主人公が走る道は、それに合わせて90°ずつ曲がっている。主人公は常に前へ進んでおり、道から落ちないように最後まで行くというのが目的のゲーム。イメージとしては、ゴールのあるヘビゲームというのが近い。
ただ最後まで行くだけではない。基本的に主人公は、曲がるたびスピードアップしていく。スピードを落とす手段はごく一部を除いて無いため、反射神経が求められるようになる。反射神経に自信がなくとも、落下した場合、ステージの最初からやり直せるため、何度もやって記憶していけば最後まで行けるだろう。

ただ、このゲームのゴール地点は明確でない。ゴールを知るためには、画面下部にある数字が重要になってくる。この数字は、左から「スコア:進行率:現在のレベル:現在時刻:スピード」となっている。ゴールを目指すなら、進行率が重要となる。この進行率を上げる条件は、①曲がる、②ジャンプする、③着地する、④キューブを拾うである。この進行率が一定(90%?)以上になったときに、ゴール地点となっている場所を通過すればクリアとなる。ゴール地点自体は、普通に進んでいれば着くが、この際進行率が足りないとゴールできない。
また、ゲームをプレイしていると、謎の声が語り掛けてくる。この声は、基本的にストーリーを話すが、たまに左に曲がれだとか右に曲がれだとかいってくる。その時は、従ったほうが楽にクリアできる。
最後に絵柄について。この、独特な極彩色の、いわゆるサイケデリックな色調は、おそらく上述したように昔のアーケードゲームを意識してのことだろう。進行率が上がったりすると、色が変わったり、一部バグったようになったりするのは、そうしたことからだろう。
このゲームは、派手な見た目ながら、ゲーム性は単純、しかし中毒性があるといったあたり、昔のアーケードゲームへの意識を大いに感じられる。また、そういったゲームにあったスコアももちろんあり、進行率やキューブを拾った数によって、スコアが上がっていき、コンテニューをすると0に戻る。自信のある人は、ハイスコアを狙ってみるのも楽しいだろう。
ネタバレあり感想
※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール
それではネタバレありで感想を書きます。
ストーリーについて、最終的に、「「氷の女王」に重要な書類を渡した」だけではあるのだが、道中のことを考えると様々な考え方ができる。中でも重要視されるのは、「主人公はただの一事務員であり、これまで何も思わなかったことが気にかかるようになる」といったあたり。
総合して考えると、「主人公は、全体主義社会に生きるあまり、周りへの関心及び周りからの関心が失われていき、何も感じなくなってしまった。しかし、「氷の女王(おそらく指導者?)」への重要書類(辞めさせる書類?)を受け取ったことで、自分や周りのことに急に関心がわく。そうした心情を描いたのが今作である」といったあたりだろうか。「氷の女王」について具体的に言及されていないため、どんな人物かは不明だが、このメッセージについては、いろいろと考えられる。

ゲーム性について。現代の基準で見ると単純に感じるが、昔のアーケードゲームを意識したと考えると面白く感じる。ストーリー、操作、システム、絵柄、それらによって、当時にありそう、と思わされる。ここはゲームデザインが秀逸だと感じた。ただ、ゲーム内自体の挙動は、現代のエンジンを使用しているためか、あまり昔っぽくない。
上記で言及しなかったキューブについて。これはネタバレになるため伏せていたが、キューブには3種類ある。「ただスコアのためのキューブ」と、「スピードアップ効果のあるキューブ」と、「スピードダウン効果のあるキューブ」がある。このキューブたちは、もちろんゲームプレイに影響を与えるが、同時にストーリーにとっても重要なファクターとして機能する。これらは、いわば主人公の心情であり、スピード=心拍数となっている。そうなってくると、このゲームのすべてが計算されつくされているように感じる。

総じて、ただ漫然とプレイすると凡作だが、考えながらプレイするとすべてが計算されたような作品。少し残念な点は、キューブを連続で取ると明滅が激しくなり、目にあまりよろしくないといったあたりか。しかし、そこを差し引いても十分面白い。アーケードゲーム4プレイ分と考えれば、十分遊べた。