小粒ゲーム紹介32:SELF 自己

中国のゲーム開発スタジオ、doBellによるゲーム「SELF 自己」の紹介。

一言で:SELF 自己とは
父を探して謎の世界で真実を探す、心理的ビジュアルノベル


概要

  • ジャンル:心理的ビジュアルノベル
  • 開発者:doBell
  • リリース日:2020年1月16日
  • 価格:通常時480円、Switch版690円
  • プラットフォーム:SteamSwitch
  • 日本語:有
  • マルチプレイヤー:無
  • コントローラー:使用可
  • プレイ時間:3~4時間
物語性 ★★★★★
ゲーム性 ★★☆☆☆
難易度 ★★★☆☆
コスパ ★★★★☆
考察度 ★★★★★

 

こんな人にお勧め

  • 考察が好きな人
  • ビジュアルに惹かれた人
  • Undert〇leの戦闘システム的なものが苦手じゃない人

 

ネタバレなし解説

ゲームについて、以下ストアページより引用。

SELF はカフカスタイルの心理サスペンスAVGゲームです。プレイヤーは色々な謎を解け、主人公の記憶の欠片を集めて、物語の全貌を再現します。

上記の文にある「カフカ」については、ご存じの方もいるのではないのだろうか。「ある朝、グレゴール・ザムザがなにか不安な夢からふと覚めてみると、ベッドのなかで自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気が付いた。」という文章で有名な、「変身」の著者、「フランツ・カフカ」である。管理人はカフカの作品は変身しか読んだことがないが、その構成は独特で、面白おかしいスタートをしつつも、徐々に不安感をあおりだし、自分がまるで夢の中にいるような、不思議な感覚に陥るような、そんな小説だった。
このゲームはまさにその感覚に近いもので、何ともいえない不安感をあおり、考察が非常に楽しめる、そんなビジュアルノベルである。

ストーリーは、簡単に言うと、「主人公が目を覚ましたところ、父が何日も帰っていないことに気づく。そのことを母や友人に言っても無視される。その謎を解き明かす」といったあたり。

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电玩世界。日本語訳は「コンピューターゲームの世界」。ネオンっぽい雰囲気。

操作は、メッセージ送り、選択に決定と、ここまでは普通である。しかし、一部のシーンでは大きく変わる。そこについてはゲーム性にて。

それではゲーム性について。
まず、基本的な骨格はビジュアルノベルである。プレイヤーは主人公となって、話を聞いたりしながら、選択をしていく。その選択が後々影響する、といったような、ありがちなビジュアルノベルである。しかし、一部のシーンになると、急にUndert〇leの戦闘的なものに変わる。ここがこのゲームの面白い点である。

self_under
見たことあるような、そんな画面。しかしルールは違う。

このシーンでは、操作する対象は顔みたいなものとなり、上下左右へと好きに動かせる。このシーンでどうすればよいか、それは実際に遊んでみて確かめてもらいたい。
また、セーブファイルは1個しかないが、いわゆるチャプターセレクトがあるため、好きな場面からやり直すことができる。チャプター名も後々見てもわかりやすいようになっており、この点は良かった。しかしながら、ログ機能や既読スキップといったシステムがないため、そこは若干ながら不便である。

今作のストーリーは非常に面白い。また、白と黒に加え、まるでネオンのような色合いが混ざり合わさることで、不思議な世界観を構築している。果たして父はどこへ行ったのか、なぜ周りの人間は父のことを無視しているのか、それは最後までプレイすればわかる…かもしれない。


ネタバレあり考察

※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール

それではネタバレありで考察を書きます。
いつもなら感想を書くが、ストーリー以外は言及の幅が狭いため、考察とする。
当然ながら、ストーリー主体のゲームなので、ネタバレを見るとゲームを楽しめなくなる。是非ともクリア後にこの項目は読んでもらいたい。また、考察という都合上、個人的な推測も含まれる。あくまで参考までにしてもらいたい。

時系列

  1. 主人公生まれる、あやすときは父が物語を読む、この時点の苗字は【村上】。
  2. 積み木遊びをする。
  3. UFOキャッチャーを父とする。
  4. 父が麻薬にかかわり始める。ピエロ人形に麻薬を隠し病院の自販機で売る。
  5. 主人公が黒服(ギャング)に誘拐される。
  6. 1回目の引っ越し。苗字【前野】に。
  7. 黒服が引っ越しの前の家に押し入るが、ピエロ人形しか発見できず。
  8. 主人公が家から脱走する。
  9. 高校入学。
  10. 友人と家で遊ぶ取り決めをする。遊ぶ日の前日に2回目の引っ越し(夜逃げ)、苗字【王】に。
  11. 白縄高校へ転校。(転校先で佐藤と出会う?後述)
  12. 車で移動中、黒服の銃撃により車のコントロールを失い、ゲーセンに突っ込む。主人公、母死亡。
  13. 搬送先で父死亡。

重要人物

  • 主人公…このゲームの主人公。死後、父の世界へと、真実を探りに行く。
  • 父…主人公の探している人物。借金や麻薬を運んでいたため、黒服に狙われる。
  • 王…父の世界では主人公の友人として姿を現す。実際は主人公の最後の苗字。2回目の引っ越し前に友人と遊ぶ取り決めをしていたのが記憶に残り、その無念からか、なじみが薄いがよく知る名前(=最後の苗字)で現れる?
  • バスの少女…白い風船を持った少女。白い風船を持っていることや、一部ストーリーより、主人公が脱走した時のことが父の世界で現れたもの。
  • ピエロ…ゲーセンに登場する人物。正体は別時系列における主人公?(1回目の引っ越し後、黒服が押し入った際に大量のピエロ人形があったことから、引っ越し前に主人公はその人形たちを目の当たりにしており、強く記憶に残っている?)
  • 佐藤…父の世界では、一部ストーリーで、王が主人公に対して呼びかけるときの苗字。主人公は強く否定している。王が呼びかけているということは、おそらく、白縄高校で、主人公(=苗字王)と知り合った人物?丸眼鏡の人物が出るがそれが佐藤でもある?

場所

  • 家…2回目の引っ越し前の家?(主人公の一番記憶に残っているところであり、友人が遊びに来る場所)
  • ゲーセン…車で突っ込んだゲーセン。
  • 路地…最初に住んでいた場所。住人たちがいろいろと物を投げてくるのは、主人公一家にあまり良い評判が無かったから?
  • 白縄高校…最後に通っていた高校。おそらくかなり短い期間しかいなかったため、校内の描写がかなり妙なことになっている。
  • 病院…2階は父が麻薬入り人形を売っていた病院?3階は父が最後に搬送された病院?
  • 診察室…主人公が幼いころ、父と行ったUFOキャッチャー?

その他

・主人公がいる世界
主人公がいる世界は、ストアページより父の世界ということがわかる。なぜ父の世界で父がいないのか、なぜ皆から忘れ去られていたのか、それは主人公から見た、周囲から父へ向けられている視線であろうか。唯一、黒服×2は、(関係がどうであれ)父と親密であったため、父のことを忘れていないということだろうか。

・それぞれのEDについて
ED1は、すべての真実を見続けた結果である。そのため、真実を見すぎた主人公は、父を信用していたはずの自分の存在意義がわからなくなり、消滅へとつながった?
ED2は、すべてから目を背け続けた結果である。真実を伝えようとする人物を主人公はすべて消していき、自分に都合のいいように考えていった結果、自分しかいなくなる。自身はピエロとなり、別時系列の主人公を手伝う?
ED3は、真実を見続けたが、父への信用がなくなり目を背ける。結果として、父と黒服のことを記憶から消す=世界にいる他の人物と同様になる。
ED4は、現実で誘拐されたことと紐づけられたもの?三輪車については誘拐された当時主人公が乗っていたもの?
ED5は、主人公が脱走した時のことを描いている?
ED6は、2回目の引っ越し後、前の家へと帰りたいという思いが再現されたもの?