大粒ゲーム紹介6:Antichamber

オーストラリアのゲーム開発者Alexander Bruce氏によるゲーム「Antichamber」の紹介。

一言で:Antichamberとは
現実では不可能な形で構成された場所を進む一人称パズルプラットフォーマー


概要

  • ジャンル:3D一人称パズルプラットフォーマー
  • 開発者:Alexander Bruce
  • リリース日:2013年2月1日
  • 価格:通常時1,980円、セール時495円
  • プラットフォーム:Steam
  • 日本語:無、ただし英語がわからなくてもOK
  • マルチプレイヤー:無
  • コントローラー:無
  • プレイ時間:8~9時間
物語性 ☆☆☆☆☆
ゲーム性 ★★★★☆
難易度 ★★★★★★
コスパ ★★★★☆
芸術性 ★★★★★

 

こんな人にお勧め

  • 不可能図形が好きな人
  • 一人称視点パズルゲームが好きな人
  • 粘り強く論理的なプレイができる人

 

ネタバレなし解説

ゲームについて、以下ストアページより翻訳。

Antichamber(部屋の否定、造語)は、当たり前のものが存在しない、幻覚作用のある心理学的な探索ゲーム。廊下の両端が繋がっていたり、空間がそれ自身で再構成されたり、不可能をただ前に進むだけで達成できたりする、エッシャーのような世界が楽しめる。

このゲームにはストーリーと言っていいものはほとんど存在しない。このゲームは、ゲームというより、芸術や哲学の中に、それを体験する形としてプレイヤーが操作できる主人公がいる、というのが適切であり、どちらかというと芸術性を楽しむゲーム、というほうが正しいからだ。
このゲームを象徴するアイコンは、ペンローズの三角形という有名な不可能図形だ。それに象徴されるように、ゲーム内は不可能図形や、不可能な構成の部屋の連続である。こういった不可能図形が好きな人には楽しめるかもしれないが、楽しめない人にはすこしこのゲームが不条理に感じるかもしれない。

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向こう側の部屋、常識的に考えると簡単に行けそうである。

操作はよくある一人称視点パズルゲームと同様に、前後左右への移動、ジャンプ、それと謎のキューブを発射したりできるものを撃つというだけであり、操作自体は簡単。
ゲーム性は、簡単に言うと、キューブをうまく使って、行けなかった場所へ進んで、重要なアイテムを手に入れつつ、先へ進む、というものであり、ゲーム性としては割と単純。また、敵と戦ったり、穴に落下したらやり直しとかもないため、その点は簡単。
しかし、ここに芸術性が入ることで、いわゆる常識を疑いながらプレイすることとなるので、ゲーム体験自体はそう単純なものでない。

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目の前の箱の中へは上や下から入れそうだが…

途中にある文章も、一応ヒントではあるが、一切読まなくとも、絵を見ればなんとなくわかるし、それすら見ずとも攻略は可能である。
とにかくこのゲームの肝は、常識を疑うこと。詰まったら、今まで来た場所で、ありとあらゆる可能性を探求し、自らの盲点を突くことで、案外先へ進めたりする。
ちなみにファストトラベル的要素はあるが、部屋のつながりが複雑であるがゆえに、なかなか使いづらい。脳内マッピングか、ひとつづつ物事を文章や画像で記録しつつ進んでいくと少し楽になるかもしれない。


ネタバレあり感想

※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール

それではネタバレありで感想を書きます。
芸術性、哲学性、そういった点で、このゲームは一芸に秀でている。
まずは芸術性、不可能図形というのは取り上げられがちなテーマではあるが、それが3Dで、一人称視点で体験できるものはかなり珍しい。その不可能図形も、外部からの観測が不可能であるため、新しい体験と同時にプレイヤーに混乱をもたらす。
また世界を構成する色は基本白。そこに非常に鮮やかな色が現れることで、視認性の向上にもつながると同時に、プレイしていくと白色の特異さに気づくかもしれない。たまに出る黒も同様。白と黒は、色相環に含まれず、明度でしかない、ということを管理人は思い出した。

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ゲーム内で数少ない、鮮やかな中に白いもの。箱の正確な位置の把握が難しい。

哲学性について、道中にある文章は、いわば格言的雰囲気を持つヒントではあるが、それらに一種の教訓的意味も込められており、非常識な世界における唯一の常識ともとれる。いくら無秩序な世界であっても、そこに何かしら秩序は存在し、その秩序をたどることで、無秩序を制する、といったところだろうか。正直、あまり哲学に精通していないので深く語るのはやめておこう。またこのゲームにおいては喋る存在がいないゆえ、なぜ主人公がこの世界にいるのか、またこの世界がどういうものか、は一切説明されないし、考察すら不可能である。

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謎の黒い箱。ブラックボックスということを表したいのだろうか。

上記二点以外にももちろんこのゲームは、パズルゲームとしても十分評価できる点に到達している。プレイヤーができることが少なく、Portal並みのプラットフォーミング能力を求められるわけではないので、ゆっくりと思考することができる。ちゃんと(常識は通用しないが)論理的に考えれば、パズル自体は割と簡単。しかし、論理的な人ほどそのパズルに至るまでの探索は困難を極める。
なかなか行きたい部屋に行きづらく、たどり着いても現時点ではパズルが解けなかったりして、別の部屋を目指しだすと、気が付いたらさっきの部屋へ戻ってる。やればやるほど見たころのある部屋を延々とぐるぐる回ってしまう。これは、人間の根底に存在する常識や論理が、無意識に働きかけることによって、盲点ができてしまい、そうなってしまう、まさに錯覚と言える。

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何度もめぐるであろう部屋の一つ。この球が厄介。

このゲームのクリアまでたどり着くのはかなり困難。とにかく粘り強くプレイしないとたどり着けない。一応、このゲームにはゴール地点はあるので、その先に何が待っているか、ぜひたどり着いてもらいたい。