
アメリカ人のゲーム開発者Lucas Pope氏によるゲーム「Return of the Obra Dinn」の紹介。
一言で:Return of the Obra Dinnとは
船員の姿の見えない船で過去をたどりつつ推理するアドベンチャーゲーム
概要
- ジャンル:一人称視点謎解きミステリーアドベンチャー
- 開発者:Lucas Pope
- リリース日:2018年10月19日
- 価格:通常時2,050円、セール時1,640円、PS4版2,250円、Switch版2,250円、Xbox One版2,350円
- プラットフォーム:Steam、PS4、Switch、Xbox One
- 日本語:有
- マルチプレイヤー:無
- コントローラー:使用可
- プレイ時間:9~10時間
物語性 | ★★★★★ |
ゲーム性 | ★★★★☆ |
難易度 | ★★★★★★ |
コスパ | ★★★★☆ |
推理度 | ★★★★★ |
こんな人にお勧め
- ミステリー小説などが好きな人
- 状況を観察するのが好きな人
- 船に詳しい人
- 探偵をやっていたという人
ネタバレなし解説
ゲームについて、以下ストアページより引用。
「オブラディン号」情報、求む 1803年、航海中に消息を絶つ
これだけでは内容の推察が難しいが、ジャンルとしては一人称視点謎解きミステリーアドベンチャー、つまり謎を解くゲームといったあたりである。
しかしこのゲームはあらゆるものが独特。まず画像を見ると、1bitの絵柄。これは見づらさもあるかもしれないが、時代設定が1800年代であることから、ある種のおぼろげな景色を描き出していると考えると味わい深い。そして主人公は保険調査官。これは、被害の状況を国に報告し、適切な金額を、適切な人間に分配するのに必要な職業であり、まさかの探偵じゃないことに驚く。
ストーリーは冒頭で語られるが、航海中に消息を絶った「オブラディン号」が、突如港に姿を現した。そこで主人公が、調査をとある人物から依頼され、船に乗り込む、といったところである。

ではゲーム内容はというと、これもまた独特。船員の姿は見えない。航海日誌もない。主人公の手元には、謎の懐中時計と調査のための本が一冊だけ。
まず最初に発見する、ただ一つだけある骨に近づくと懐中時計が反応し、いきなり謎の会話が再生される。そして画面に衝撃的な光景が映った後、一時停止する。そう、この懐中時計は、その骨などに対応した人物が死ぬ瞬間を再生する懐中時計なのである。そして1つだけある奇妙な扉をくぐると元の世界に戻ってきた後、新たな骨へと案内される。

つまり、ゲームの流れは、骨を見つける→死んだ瞬間を再生→また次の骨へ、という感じである。一応、プレイヤーの好きな時に、乗ってきたボートに戻ればゲームクリア、報告のちEDになるため、クリアだけは簡単である。しかしこのゲームのメインは、今死んだのが誰で、どういう手段で、誰によって殺されたのかを、船に乗ってた60人全員分推理することである。
「なんだ、そんなの簡単じゃん」と思ったかもしれないが、このゲーム、ヒントが最小限である。前述した本には、1800年代であるがゆえ、写真や音声記録は残っていない。書いてあるのは、依頼した人物による前書き・後書き、船の地図、船員が集まった様子を描いた絵と、船員乗客名簿だけ。これと懐中時計を駆使しつつ、全員特定できれば完全クリアと言っていい。

正直かなり難易度は高い。しかし、たとえ予想が間違っていても大丈夫だし、3人分正しいのがそろえば、カットシーンが入って、正解ということで固定される。そのため、最終的にどうしてもわからないのは総当たりもできなくもない(項目数が項目数だけにある程度特定する必要はあるが)。また、船に詳しかったり、訛りなどに詳しかったりすると、少し解きやすくなる(もちろん、知らなくても問題ないが、全部正解は不可能に近い)。
このゲームはCERO:D指定をされているが、その理由は、こういったミステリー物には不可欠な殺人があるからであり、もしこのゲームがちゃんと色がついているものだったら、CERO:Z指定、もしくは日本で発禁になっていたかもしれない。そう考えると、この1bitの絵柄はいろんな方面で活躍しているなと思う。
なお、このゲームの開発者は、一時期話題になった「Papers, please」の開発者でもある。どちらのゲームもなかなか尖った、面白いテーマになっているので、管理人としてはどちらも遊んでほしい。
ネタバレあり感想
※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール
それではネタバレありで感想を書きます。
ストーリーについては、一通りやればわかるように、「人魚によってさまざまな怪物が呼び出され、結果それは収まったものの、船員は皆何らかの理由で死亡した。」という感じである。
具体的なことは、考察しているサイト等があるので省略するが、全員分完成させた後に見れるようになる「取引」により、本編だけでは割とバラバラだった事件等がすべてつながる、という演出は非常に面白い。

ゲーム性についても、面白い、と言える。推理ものではあるが、主人公は当事者ではなく、また手記等が残されているわけでもないが、過去の一瞬を見れる懐中時計により、すべての関係を推察していくというのは全く新しい。また、残り数人を総当たりでやった人もいるかもしれないが(管理人がそうだったが)、ちゃんとすべてのシーンの細かい点にまで注目すれば、論理的にすべてあてはめられる、というのは流石だなと思った。
また、人によっては見た目や声、話の内容、取っている行動によってどの船員かを大まかに推測できるのも面白い。明らかに違う言語はともかく、ちゃんと国によって訛りを変えているのは細かいディティールながらも素晴らしい。

総じて、開発者の手腕が光る作品だったといえる。この開発者の前作、「Papers, please」もかなり面白かったが、あちらはどちらかというと「ある程度ルーティーンを決めて作業に徹底する」のに対し、今作は「状況を観察し、論理的に結果を出す」という、まったく違う方向性のゲームである。普通、似通ったゲームは開発しやすいが、まったく違う方向性のものは開発しにくい。ここまで方向性が違うものが開発できるとなると、次の作品へも期待度が高まる。