小粒ゲーム紹介1:DISTRAINT

フィンランドのゲーム開発者Jesse Makkonen氏によるゲーム「DISTRAINT: Deluxe Edition」の紹介。

一言で:DISTRAINTとは
動産差し押さえ業者の主人公の葛藤を描く、2D精神的恐怖アドベンチャー

概要

  • ジャンル:2D精神的恐怖アドベンチャー
  • 開発者:Jesse Makkonen
  • リリース日:2015年10月21日
  • 価格:通常時498円、セール時84円、Google Play版740円、App Store版490円
  • プラットフォーム:SteamGoogle PlayApp Store
  • 日本語:有
  • マルチプレイヤー:無
  • コントローラー:使用可
  • プレイ時間:1~2時間
物語性 ★★★★☆
ゲーム性 ★★☆☆☆
難易度 ★☆☆☆☆
コスパ ★★★☆☆
怖さ ★★☆☆☆

 

こんな人にお勧め

  • 「精神的恐怖」ってどんな感じのゲームか気になってる人
  • そこまで怖くないホラーゲームがしたい人
  • ドッキリ系とかゾンビを見飽きた人

 

ネタバレなし解説

ゲームについて、以下、ストアページより翻訳。

ドットホラーストーリーは2D心理ホラーアドベンチャーゲーム。

君はプライスという名の野心的な若者の後を継ぐ。

大企業との提携を目論んだプライスは年老いた女性の財産を奪う。
まさにその瞬間、彼は自分の人間性の代償を知ることとなる。

これはプライスとその悔恨の物語…
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“まだ君の踊りを見たことがなかった!”

既に精神的恐怖を味わっただろう。特に上記画像には疑問点しかわかないはず。しかしそれについては実際にプレイしてもらったほうがよくわかるだろう。
まず、このゲームについて。操作は非常に単純。左右への移動と使用/調べるボタンとアイテムメニューを開くくらいしかない(あとはオプションメニューを開く)。非常に単純なつくり。
ゲーム性としては、ポイントアンドクリックゲームのように、アイテムを拾う→使う場所を探す→謎を解く、これくらいしかない。
しかし、その単純さを打ち消すストーリー性、恐怖さがあるのだ。

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ホラーゲームでよくある荒廃したアパート。ゾンビは出てこない

ただ、恐怖と言ってもゾンビが出てきたりするわけではない。そこが「精神的恐怖」というジャンルが他のホラーと違う点である。
このゲームでは、主人公プライスは動産差し押さえ業者である。動産差し押さえをするということは、つまり住人に対して「ここから出ていけ!」というようなものである。確かに差し押さえには少なからず理由がある(例えば借金とか)し、それは事務的なものと割り振ればずっと仕事を続けられることだろう。しかし主人公は、差し押さえに行った老婆と話をしたときに、自身に良心の呵責が起きてしまう。そこから、主人公は様々な、現実と幻覚の狭間で、葛藤をしていくことになる。

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プライス「でも、あなたの動産を差し押さえねばなりません。」 – 泣いている老婆の前で

このように、このゲームは超常的な話ではなく、ごく身近に起き得る精神的な葛藤を描いたものである。「嫌なら仕事を辞めてしまえばいい」という人は多々いるかもしれないが、プライスにはプライスなりの、仕事をやめられない理由があるのだ。それは実際にプレイして確かめてほしい。

以上がネタバレなし紹介である。物語性は非常によく、一度プレイして自分に合っていれば、続編「DISTRAINT 2」もいつの間にかプレイしていることだろう。
難点は、ホラーとしての恐怖演出の弱さと、ゲーム性がほとんどないといってもいいところである。ゲームの性質上、途中で恐怖の正体に気づいてしまったり、先の展開が読めてしまったりするせいで、ホラーという感じは終盤になるにつれ弱まってしまう。また、ゲーム性として、脱出ゲームとかポイントクリックゲームは謎解きやパズルがあったりして楽しむことができるのだが、このゲームはほとんどが行ける場所に行ってアイテム拾ってはめるだけな上、左右にしか動けないからゲームとしてみてみると微妙かもしれない。
しかし、このゲームは開発をしたのがたった一人であるという点、更にセールの時は100円切るという点を考えると、ちょっとした小説を読む感じで購入してもらえればと思う。

ネタバレあり感想

※ここから先ネタバレあり、それでもいい方はスクロール

それではネタバレありで感想を書きます。
まず、すべての始まりである、グッドウィン夫人への差し押さえから、そこまではよかった。しかし、そこから良心の呵責で、どこからが現実でどこからが虚実なのかわからない世界が続くことになる。一度クリアすればわかることなのだが、この後入る部屋にある「それ」は、プライスの最期とあまりにも一致しすぎている。思うに、すでにこの段階で、プライスは虚実の世界に入っていたのだろう。冒頭の時点で、結末を示す手法。それはいたるところで使われているが、これは恐怖を演出しつつも、強い印象を残すことで、クリアしたプレイヤーが「これはあのことだったんだ」と思い返し、2周目をプレイするようになるというようになっている。事実、自分も1周目をクリア後、すぐに初めからスタートしてしまった。
その後、襲い掛かる様々な幻覚、しかし、共同経営者が現れたところは現実なのだろう。つまり、グッドウィン夫人へ差し押さえした後、会社に帰って、報告をしたのが現実のPriceであって、その移動中に幻覚が襲い掛かってきたのだろう。
家に帰っても幻覚は止まらず、両親の姿まで見るようになる。この両親とプライスの関係については、続編のネタバレになるので伏せておく。
その後、グッドウィン夫人は体調を崩し、入院する。そしてプライスのもとに、医師から電話がかかる。「あなたに会いに来てほしい」と。
もちろんプライスは差し押さえたせいでこうなったんだと悩む。その後意を決してグッドウィン婦人のもとへ向かう。そして、グッドウィン夫人から「自分を責めないで」と言われる。

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グッドウィン夫人の幻覚を見る。自分が差し押さえしてなければ…と

これについては、私にも思うところはある。小さいころ、失敗したとき、親に「あなたは悪くない」と言われた。だけども罪悪感は残り、その思い出は消えることなく心の中に残り続けてしまう。でも、成長してみると、「許す」という行為はよほど仲の良い関係じゃないとできないということに気づいた。つまり、本当にグッドウィン夫人はプライスのことを信頼しており、本心から、そういった慰めの言葉が出るのだろう。しかし、プライスはいまだ自分を許せないままでいる。だから幻覚を見続ける。
その後、グッドウィン夫人は亡くなり、墓地へと行くプライス。そして決断をする。「会社を辞めてやる」。そして会社へと辞表を提出しに向かった。
辞表を提出しに行ったところ、共同経営者3名がいない。戸惑ったまま、最後のドアを開けると、「おめでとう」。そう、サプライズでなんとプライスは共同経営者になれたのだ!その瞬間、プライスは会社を辞めようという意思がなくなり、共同経営者として働いていくことになったのだ。
確かに、共同経営者という肩書をもらったら、私でも、やめる気なんてなくなるだろうな、と思った。だって、大金持ち確定みたいなもんじゃん?こういうと俗物みたいだが、この世なんてしょせん金、稼げるに越したことはない。しかもプライスは若いから、これから富を築き上げていけるだろう。まあよほど無能じゃなければ、だが。

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謎のキノコにより幻覚を見る。このシーンは割と印象的。

しかし話はここで終わらない。その後プライスは失敗をしてしまい、会社をクビになってしまい、ついに差し押さえされる側になってしまう。そして自分の人生に悲嘆し…

このどんでん返しには正直驚いた。まさに短編小説といった感じである。
総括して、このゲームはメッセージ性という面では少し弱い。一言で、「プライスは自分の野心に負けてしまい、そこから転々と物事が悪いほうに進んだ。」くらいにしか言えない。しかし、その考えは、続編のDISTRAINT 2を遊んで変わった。具体的にはDISTRAINT 2の紹介で。

小粒ゲーム紹介2:DISTRAINT 2